ある調査によれば、海外旅行中のトラブルのトップは、断トツで「盗難・すり」だそうです。
私は海外に出かけるようになってほぼ20年になりますが、ついこの間ヨーロッパで初めてのスリ被害に遭って、パスポートと免許証、クレジットカードと現金一式をなくしてしまいました。
そこで防犯対策に良さそうと思ったのが、銀行口座とリンクしておらず、スペアカード付きで安心と評判の「マスターカード プリペイド キャッシュパスポート (Cash
さっそく申し込んでしばらく使ってみたのですが、海外旅行経験者でも便利で安心だと思うところがたくさんありました。
ということで、この記事では、私自身が使ってみて感じた、キャッシュパスポートのメリット・デメリットを、他の人の口コミも合わせてご紹介したいと思います。
キャッシュパスポートのメリット

キャッシュパスポートを空港のファストフード店で
さて、世界的な外貨両替会社「トラベレックス」と国際カードブランドの「マスターカード」が協力して発行する、海外専用プリペイドカード「キャッシュパスポート」(正式名称:Master
私も、キャッシュパスポートを作る前にメリット・デメリットを詳しく調べてみたのですが、確かにこのカード、海外旅行の防犯対策がよく考えられていると感じました。
メリット①:使う分だけチャージしておけば、万が一の被害額を最小限に
例えば、海外旅行中や海外留学中のお小遣いを、キャッシュパスポートにチャージした中から使うようにすれば、万が一の時の被害額を少なくできますし、ムダ使い防止にもなりますね。
メリット②:銀行口座とつながっていないので、盗難・紛失時にも被害を少なく
キャッシュパスポートは銀行口座と完全に切り離されているので、カード犯罪に万が一巻き込まれても被害を少なくできます。
メリット③:現金を持ち歩かなくていい
キャッシュパスポートは世界どこでもクレジットカードとほぼ同じように使えるので、持ち歩く現金を最小限にでき、防犯対策にも有効です。
メリット④:日本円を持っていかなくても良い
キャッシュパスポートを使って現地のATMで現金を引き出すことができます。両替用の日本円の現金は最小限でよくなるので安心です。
メリット⑤:ICチップ対応
キャッシュパスポートには、ICチップがついていてスキミングなどのカード犯罪対策も万全です。
メリット⑥:万が一盗難に遭っても、面倒な手続きを最小限に
例えば、メインで使っているクレジットカードを紛失や盗難で再発行すると、カード番号が変わるため携帯料金などの定期支払いの手続きを全てやり直さないといけませんが、海外旅行専用のキャッシュパスポートならその心配はありません。
最大のメリット:無料のスペアカード
さらに、キャッシュパスポートが心強いのは、スペアカードが1枚無料でついてくること。
他のプリペイドカードやデビットカード、クレジットカードでもスペアカードに対応しているものはほぼありません。
例えば、万が一キャッシュパスポートを紛失したり盗まれたりした場合、財布と一緒にお金もなくしていることが多いはずです。
そんな時、キャッシュパスポートなら、スペアカードを使えば、近くのATMで現地通貨を引き出すことができるんです。
もちろん、スペアカードを使う状況にならないのが一番いいのですが、万が一の時にはこのスペアカードや緊急現金手配サービスは本当に助かると思います。
使い勝手は便利?

ヨーロッパのスーパー
さて、私も実際にキャッシュパスポートを中国やヨーロッパなど何ヶ所かで使ってみましたが、海外プリペイドカードの中ではかなり便利なカードだと感じました。
お得なレートを狙える「事前両替」と手間なし「都度両替」
海外プリペイドカードは、両替のタイミングによって「都度両替型」と「事前両替型」の2種類があります。
事前両替型・・・カードに日本円を入金(チャージ)した後、ネット上の画面から事前に渡航先の通貨に両替しておきます。
ほとんどの海外プリペイドカードは、このどちらかのタイプ(選べない)ですが、キャッシュパスポートだけは「都度両替」と「事前両替」を自由に選べるんです。
円高で「いま両替すればオトク!」と思えば両替しておいてもいいし、面倒なら日本円のままにしておいても、使った時に自動で両替されます。
「マルチカレンシー」9通貨に対応
キャッシュパスポートは海外専用プリペイドカードの中では最も対応通貨が多いのが特長です。
キャッシュパスポートの対応通貨 | |
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通貨 | 使える国 |
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アメリカ、ハワイ、アラスカ、グアム、サイパン、パラオ等 |
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イタリア、オーストリア、オランダ、ギリシャ、スペイン、ドイツ、フィンランド、フランス、ベルギー等 |
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イギリス |
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オーストラリア |
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ニュージーランド |
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カナダ |
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シンガポール |
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香港 |
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台湾、韓国、中国、タイ、フィリピン等* |
*キャッシュパスポートを日本で使うことはできません
世界中で(対応通貨以外の国でも)使える
キャッシュパスポートは、上で紹介した9通貨の使える国の他にも、中国元や台湾ドル、タイ・バーツ、インドネシア・ルピア、韓国ウォン、フィリピン・ペソなどなど、マイナー通貨の国でも使うことができます。
その時も、キャッシュパスポートの日本円口座にお金を入れておけば、それらの国での利用時に自動的に日本円に換算して、カード残高から引き落としてくれるので、とても簡単です。
どこのお店でも使えるマスターカードブランド

キャッシュパスポートをヨーロッパのカフェで
キャッシュパスポートは世界第2位のカードブランド「マスターカード」ブランドなので、世界中の約3,810万のMaster
私も何ヶ国かで試してみた限り、外国人が利用するようなお店ではほとんど問題なく使うことができました。
海外ATMで現地の通貨を引き出せる
キャッシュパスポートが「LINE Pay」のような一般的なプリペイドカードと違うのが、海外のATMでキャッシュカードとして使えること。
キャッシュパスポートにお金をチャージしておけば、現地に到着した後、世界210ヶ国以上(ほぼ世界どこでも!)に設置されている「Mastercard」や「Maestro」のマークのついた空港のATMで現地通貨を引き出すことができるんです。
大学生・高校生・中学生でも作れる
キャッシュパスポートには年齢制限がないので、海外留学に出かける未成年のお子さんに持たせることができます。
実際、留学生の仕送り方法としては、キャッシュパスポートは他の方法に比べてかなり安全で便利だと思います。
キャッシュパスポートの使い方

キャッシュパスポートをヨーロッパのコンビニで
「海外専用のプリペイドカード」と言うと、特殊なカードに思うかもしれませんが、使い方は基本的にはクレジットカードと同じで、とっても簡単です。
1.入金(チャージ)する
2.希望の通貨に両替する(面倒なら両替しなくてもOK)
3.ATMやお店でクレジットカードのように使う
4.残高が少なくなったら(1)に戻る
私が実際にキャッシュパスポートを使った時の写真付きで説明していきたいと思います。
入金(チャージ)
キャッシュパスポートと一緒に届く説明書に記載されている振込先口座に、日本円を振り込みます。
プリペイドカードなので入金をしないと使うことができないのですが、この時にいくつか注意することがあります。
- 振り込み人名義を「キャッシュパスポートのカード番号▲カード名義人」(▲は空白)にしないと入金確認が遅くなることがあります。
- 親など代理人名義からの振込には代理人登録が必要です。
- 海外の銀行(ATM)からチャージはできませんが、日本のネットバンキングを使って振り込みをすれば海外滞在中もチャージは可能です。
- チャージした金額が処理されるのは平日の昼間だけなので、特に週末や連休などの前は、早めに振り込みをしておくのがオススメです。
事前に対象の通貨に両替する方法
キャッシュパスポートは、専用サイトから8つの通貨に事前に両替しておくことができます。
円高のタイミングで今両替すればオトク!と思ったら事前に両替しておくのもいいですね。
お店での使い方
キャッシュパスポートは、海外のお店で使うのもとても簡単で、クレジットカードのように提示するだけでOKでした。
最近では欧米を中心に、ICチップ対応の小型端末を備えたお店も多く、カードを差し込んで、暗証番号を入力するように言われることもあります。
カード決済端末での使い方
1.機械の手前の差し込み口にカードを差し込む
2.機械に表示された金額を確認して、右下の「OK(またはEnter)」キーを押す
3.暗証番号を入力して、再度「OK」キーを押す
4.「REMOVE CARD」と表示されたらカードを引き抜く
ATMでの使い方(現地通貨の引き出し方)
キャッシュパスポートのいいところは、ショッピングだけでなく現地のATMで現金を引き出せること。
1.キャッシュパスポートをATMの挿入口に入れる
2.暗証番号4桁を入力して右下の「OK(またはEnter/CONFIRM)」を押す
3.「Withdrawal(引き出し)」を選ぶ
4.金額を選択する
5.現金とレシート、カードを受け取る
ATMによって一回あたりの引き出し限度が異なるので、キャッシュパスポートで家賃や学費などまとまった額の現金を引き出す場合は注意が必要です。
デメリット:手数料が高い?レートが悪い?
ネットを見ていると、「キャッシュパスポートの手数料が高い!」という口コミをたくさん見かけます。
確かにキャッシュパスポートの為替手数料などは、他のカードに比べてやや高い水準ですね。
ただ、、手数料を気にしすぎてトラブルに巻き込まれたりしたら、大損失になるので、安全を少しの手数料で買うと考えれば十分納得できる手数料だと思います。
ということで、ここからはキャッシュパスポートの各手数料と、節約のコツを見ていきたいと思います。
為替レートが不利?
キャッシュパスポートの為替レートはあまり良くないという評判がよく見られますが、実はこれ「事前両替」か「都度両替」かで変わってくるんです。
「事前両替」の場合、トラベレックスのレート+手数料4%で計算されます。(今日のレートはこちらから確認できます)
「都度両替」の場合、MasterCardのレートに手数料として4%を加算した為替レートが使われます。(MasterCardのレートはこちら(英語のみ)で確認できます)
何日かこのレートを見ていると、このトラベレックスのレート(事前両替レート)がどうやらあまり良くないですね。
ということで「無理に現地通貨に両替せず、日本円のまま入れておいて使う」のが為替手数料の節約のコツのようです。
入金手数料
キャッシュパスポートは入金時に1%の手数料がかかります。これは節約しようがないのであきらめましょう。
年会費(口座管理費)がかかる?
キャッシュパスポートに年会費はありませんが、12ケ月間利用または入金がない場合には13ケ月目より毎月150円(または外貨相当額)の管理費が引き落とされます。
ただし、キャッシュパスポートの残高が150円未満なら口座管理費がかからないので、1年以上海外に行く予定がない場合は残高を使い切っておくようにすれば大丈夫です。
ATM手数料に注意
キャッシュパスポートを使って現地のATMで現地通貨を引き出す場合、ATM手数料が1回あたり200円(事前両替済の場合、2米ドル、1.75ユーロ、1.50英ポンド、2.50豪ドル、2.75NZドル、2カナダドル、2.50SGドル、14香港ドル)かかります。
これを節約するには、1回に引き出す金額を多めにするといいでしょう。
また、海外にはATM独自の手数料を別途徴収するATMもあるので、現地の人から情報収集するなどして現地ATM手数料が無料のATMを見つけましょう。
清算手数料(解約手数料)を節約するコツ
キャッシュパスポートに残高が残っている場合に清算して払い戻しを受けることができますが、500円+消費税の手数料がかかるので、帰国前に使い切るか、海外のネットサービス(Google Playなど)のチャージに使うなどすると手数料を節約できます。
サイトが使いにくい
他のデメリットとしては、キャッシュパスポートのサイトがかなり使いにくいのが気になりました。
スマホ対応もしていないので頻繁に使うにはちょっと厳しいかなと思います。
最初にカード登録で使うのはどうしても必要ですが、それ以降でサイトにアクセスするのは事前両替ぐらいなので、都度両替式で使うようにすればサイトはほとんど見なくて大丈夫です。
キャッシュパスポートとクレジットカードの違い
一番大きな違いは、クレジットカードが「後払い」、キャッシュパスポートは「前払い」なことです。
また、クレジットカードには収入審査がありますが、キャッシュパスポートには収入審査はありません。
クレジットカードは一般的に18歳以上にならないと申し込めませんが、キャッシュパスポートは中学生や高校生でも申し込むことができます。
キャッシュパスポートはホテルのデポジット(保証金)や機内販売など、ごく一部で使えないお店があります。
一部のクレジットカードは最短で即日できるものもありますが、キャッシュパスポートの発行には1週間程度かかります。
キャッシュパスポートとデビットカードの違い
キャッシュパスポートは銀行口座とは繋がっておらず、カード専用口座にチャージするので、万が一の時に被害が拡大しない安心感がありますね。
一方で、キャッシュパスポートは、専用口座に振込をしたり、振込名義を指定された形式にしないといけないなど、入金(チャージ)がやや面倒だなと感じました。
よくある質問
キャッシュパスポートは店頭で申し込みできる?
キャッシュパスポートはトラベレックスの店頭でも申込みができますが、改めて受け取りに行かないといけないので、オンラインで申し込みをしてしまうのが楽ですね。
キャッシュパスポートの限度額は?
キャッシュパスポートの限度額は以下のように決まっています。
防犯のためにも、特に必要のない時にはキャッシュパスポートの残高は少なくしておくことをお勧めします。
また、家賃や学費の支払いなどでまとまった額をATMから引き出す場合などは、24時間15万円の引き出し限度額に注意しましょう。
キャッシュパスポートの限度額 | |
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最小入金額 | 10,000円 |
1回あたりの入金限度額 | 1,000,000円 |
残高限度額 | 2,000,000円または外貨相当額 |
12ケ月の入金限度額 | 5,000,000円 |
ATM引出し限度額(24時間) | 150,000円または外貨相当額 |
ショッピング利用限度額(24時間) | 850,000円または外貨相当額 |
キャッシュパスポートの有効期限は?
キャッシュパスポートの有効期限は、カードの表面右下にMM/YY(月/年)の形式で刻印されています。
キャッシュパスポートとマネパカードの比較
海外専用プリペイドカードの代表的なものとして、キャッシュパスポートとよく比較されるのが「マネパカード」です。
簡単に言えば、コストにこだわるならマネパカード、便利や安全を重視するならキャッシュパスポートがいいと思います。
キャッシュパスポートとマネパカードの違いをまとめてみました。
為替レートはマネパカードが有利
マネパカードの為替手数料は約0.85円(米ドル)~1.35円(英ポンド)と破格の安さです。
キャッシュパスポートは米ドルの事前両替の場合で実質手数料は6円~7円ぐらい(都度両替だと4円~5円)になるでしょうか。
マネパカードは初心者向きではない
海外専用プリペイドカードは、防犯のためにも「一度にたくさん入金せず、こまめに入金する」のが大切です。
キャッシュパスポートなら、日本円口座に入れたまま使えるので、入金してしまえば特に操作は必要ありません。
一方でマネパカードは、必ず外貨に両替しないといけないので、入金しただけでは使えるようになりません。
どちらが初心者向きかと言えば、私ならキャッシュパスポートをお勧めします。
マイナー通貨ならキャッシュパスポートが楽ちん
マネパカードをフィリピンペソや台湾ドル、韓国ウォンで使う場合、まずチャージした金額を日本円→米ドルへ両替し、米ドル口座から再度マイナー通貨に両替するという手順になります。
キャッシュパスポートは、カードにチャージしたらそのままでOK、使った時に自動的に両替されるので楽ちんです。
年齢制限:中学生~高校1年生の留学にはキャッシュパスポート
キャッシュパスポートに年齢制限はありませんが、マネパカードには16歳以上という年齢制限があります。
中学生から高校1年生のお子さんが海外留学、交換留学に行く場合に持たせるなら、キャッシュパスポートがいいですね。
セキュリティ防犯対策
基本的な防犯対策はマネパカードもキャッシュパスポートもICチップ付きでスキミング犯罪ができなくなっているので安心です。
ただ、キャッシュパスポートのメリットはやはり、スペアカード付きなことでしょう。
特に長期間海外に出かけるなどで、紛失・盗難した時の対策が限られる場合は、キャッシュパスポートがあるとかなり安心だと思います。
キャッシュパスポートを実際に使ってみた感想
さて、わたし自身も中国出張の時と、2週間のヨーロッパ旅行の際にキャッシュパスポートを使ってみましたが、やはり現金を持ち歩かない安心感、スペアカードの安心感はとても大きなメリットと感じました。
入金手数料がかかったり、為替レートが若干高かったりと、全般的にコストがいくらかかかるのは私もデメリットとして気になりました。
ただ、その分だけ他のカードにはない安心機能が付いているので、この程度のコストは許容範囲でしょう。
少なくとも、発行手数料はかからないので、とりあえず作って1万円ぐらい入金してみて、試しに使ってみるのも悪くないと思いますよ。
- キャッシュパスポート
コラム:口コミで広まってきたキャッシュパスポート
トラベレックス社は、現在の「MasterCardキャッシュパスポート」の前身に当たる「VISA ATMキャッシュパスポート(米ドル建て)」を2004年から発行していました(現在は発行終了)。この「VISA ATMキャッシュパスポート」は、日本でお金を「VISA ATMキャッシュパスポート」に入金していくと、アメリカやハワイ・グアムなどのATMで現地通貨を引き出せるという当時としては画期的なカードで、「海外旅行や海外出張で使うお金を安心して便利に持っていける」と海外旅行者の間の口コミで評判になっていました。
「キャッシュパスポートをアメリカ以外の国でも使いたい」という声も多かったことから、2008年~2009年にかけては日本円、ユーロ・英ポンド・豪ドル・中国元(人民元)建てのカードがそれぞれ発行されました(現在は発行終了)。その後、2010年にはショッピングでも使える「MasterCardキャッシュパスポート」を発行、このカードの便利さはあっという間に評判になり、キャッシュパスポートの利用額がそれまでの1.5倍になったと言われています。

各国通貨建ての「キャッシュパスポート」
「さらに2014年には、様々な国に出かける旅行者や出張者のために、日本円・米ドル・ユーロ・英ポンド・豪ドル・NZドル・カナダドル7つの通貨を1枚のカードに入れた「マルチカレンシー キャッシュパスポート」を発行、さらに2016年11月には、対応通貨にシンガポールドル・香港ドルを追加、とユーザーの声に応えてどんどん進化しています。